「とりあえずサプリ飲んどけば大丈夫」が危ない理由を栄養士が解説

「最近野菜食べてないけど、サプリ飲んでるから大丈夫でしょ」。夫がこう言い放ったのを聞いて、管理栄養士として黙っていられなくなりました。宮下真帆と申します。病院での栄養指導を経て、現在はフリーランスで食事カウンセリングをしています。2児の母でもあるので、家族の健康管理は仕事であり日常でもあります。

栄養指導の現場でも「サプリ飲んでるから野菜は別にいいかな」という方は少なくありません。気持ちはよくわかるんです。忙しいし、野菜は高いし、料理する余裕もない。でも栄養士の立場から正直に言わせてください。サプリだけに頼る栄養補給は、思っている以上にリスクがあります。

サプリメントの「手軽さ」が裏目に出ることがある

サプリメントは特定の栄養素を効率よく摂れる便利なものです。ただ、その手軽さにこそ落とし穴があります。

食品安全委員会は「健康食品に関するメッセージ」の中で、錠剤やカプセル形態の健康食品は過剰摂取につながりやすいと指摘しています。味もにおいもないぶん、つい多めに飲んでしまう。マルチビタミンと個別のビタミン剤を併用して、同じ成分を知らず知らずのうちに重複摂取しているケースもよくあります。カウンセリングで食事記録をつけてもらうと、「えっ、これってビタミンA被ってたんですか?」と驚かれることが本当に多いんです。

とりわけ気をつけたいのが脂溶性ビタミンです。ビタミンAやビタミンDは水溶性のビタミンCなどと違って体外に排出されにくく、体内にどんどん蓄積されます。過剰な状態が続くと、肝機能障害や高カルシウム血症といった深刻な健康被害を引き起こすことがあります。

2024年には紅麹サプリメントによる大規模な健康被害が社会問題になりました。入院者は240人を超え、死亡事例も報告されています。「食品だから安全」「天然由来だから安心」という思い込みは、残念ながら根拠がありません。

日本人の野菜不足は数字で見ると深刻

「じゃあ野菜を食べればいいんでしょ」という話なのですが、それがなかなか難しいのも現実です。

令和5年の国民健康・栄養調査によると、日本人の1日あたりの野菜摂取量は平均256g。厚生労働省が掲げる目標は1日350gですから、約100gも足りていません。しかもこの数値はここ数年、減少傾向にあります。20代が最も少なく、年齢が上がるにつれて増える傾向はあるものの、どの世代でも目標には届いていないのが実情です。小鉢1皿分がまるまる足りていない計算になります。

「足りない分はサプリで補えばいい」と考えたくなる気持ちはわかります。でもサプリで補えるのはあくまで特定の栄養素だけです。野菜を食べることで得られるメリットは、特定のビタミンやミネラルの摂取にとどまりません。

  • 食物繊維による腸内環境の改善
  • フィトケミカルなど微量成分の摂取
  • 複数の栄養素が組み合わさることで生まれる相乗効果

こうした要素は、錠剤ではカバーしきれません。消費者庁も健康食品に関する注意ポイントの中で、できるだけ錠剤・カプセルではなく通常の食品形状のものを選ぶことを勧めています。

「食べること」が基本、そのうえでの補助

とはいえ、毎食きっちり野菜350gを意識するのは現実的ではありません。私自身、忙しい朝は子どもたちと一緒に粉末の青汁を飲んでいます。野菜由来の栄養をバランスよく含んでいて、食物繊維も一緒に摂れる。錠剤を水で流し込むのとは違って「飲んでいる」実感があるのも、個人的には続けやすいポイントです。

青汁とサプリにはそれぞれ得意な領域があって、「どっちが上」という単純な話ではありません。青汁とサプリの特徴を比較した日本薬健の解説ページでは、それぞれどんな人に向いているかが整理されていて参考になります。自分にはどちらが合うのか迷っている方は、判断材料として一度目を通してみてください。

大前提として、毎日の食事が基本。そのうえで足りない部分を補う手段として青汁やサプリを位置づける。サプリを「保険」だと思って食生活を放置するのではなく、まず食べることから始めてほしい。地味ですが、これが管理栄養士としての本音の答えです。

まとめ

「サプリを飲んでいれば安心」という考えには、過剰摂取や栄養の偏りといったリスクが潜んでいます。まずは日々の食事を少し見直すこと。そして補助的に取り入れるなら、特定成分を凝縮したサプリだけでなく、野菜の栄養をまるごと含む食品も選択肢に入れてみてください。完璧な食生活は誰にもできません。私も夕飯がカップ麺の日はあります。だからこそ、「ちょっとだけ意識する」を日常の中で続けていくのが大事だと思っています。